ベルゲランタス 照波錦(曙斑)とは
夜明けの雲が淡くほころぶ瞬間、その色をそっと葉に閉じ込めたような多肉――それが「ベルゲランタス 照波錦(しょうはにしき)」です。鮮やかな緑に乳白色〜レモンクリームの曙斑が浮かび上がり、陽光を受けるたび微細なガラス片を散りばめたようにきらめきます。群生しても徒長しにくく、鉢の縁から滴るように咲く姿は、まるでミニチュアの草原。
日本では「三時草(さんじそう)」の愛称でも知られ、午後3時ごろに花を開く性質から名付けられました。名前にある「照波」は葉の艶、「錦」は斑入り、「曙斑」は日の出色の縁取りを意味します。
基本情報(分類・属名・原産地など)
学名Bergeranthus multiceps。ハマミズナ科ベルゲランタス属に属する南アフリカ・東ケープ原産の小型メセン(夏型)。現地では砂岩の岩棚に根を張り、昼夜の寒暖差と乾風に鍛えられ、株元に瘤状の塊根を形成します。照波錦はその斑入り選抜個体で、日本の園芸界では希少性の高さと丈夫さを併せ持つ人気品種として流通しています。
魅力とは?
最大の魅力は動き続ける斑模様。新葉が展開するたび曙斑の幅や位置が微妙に変わり、一本の筆で描き直した水墨画のような一期一会の表情を見せます。群生株では葉先が放射状に開き、中心に向かって朝陽が集まるかのような光のすじが現れ、写真映えも抜群。成長期には黄緑~ライム色の新芽が差し色となり、コンパクトながら存在感は溢れんばかりです。
香りと花
晩春〜初夏、ピンヒールのような花茎の先に直径3〜4cmほどのレモンイエローの舌状花を開きます。夕暮れどきにゆっくりと花弁をほどき、翌朝には閉じるリズムを数日繰り返す夜行性。午後3時前後に最も大きく開花するため「三時草」という呼び名が定着しました。香りはほぼ無香ですが、花心に集まる淡いピンクの裏弁が、斑入り葉との色彩バランスを優しくまとめてくれます。
育て方のコツ
光:春秋は日当たり良く、夏は午前光+遮光30%が理想。直射が強過ぎると斑が灼けるので注意。
水:春秋の生育期は「乾いたらたっぷり」、冬の休眠期は断水~月1霧吹き。葉がシワ寄る程度が合図。
用土:硬質赤玉6+軽石2+腐葉土1+くん炭1など排水重視のブレンド。根が太く伸びるため浅鉢より深さ8cm以上推奨。
温度:耐寒は-6 °C前後まで。霜が当たる地域では5 °Cを下回る前に室内へ。盛夏は風通し命。
肥料:生育ピークの4〜5月・9月に緩効性少量のみ。与え過ぎは斑のメリハリを曇らせ徒長を招きます。
えんちょのひとことメモ
曙斑は光の量と気温差で色ノリが変わります。春にやや強めの光を当て、夜間は涼しめに保つとクリーム色がいっそう濃く、葉先にほのかな紅が差すことも。株全体がぼやけてきたら剪定を兼ねた挿し木でリフレッシュ。斑入りは発根が少し遅めですが、気長に待つと必ず目覚め、新たな夜明け色を運んでくれますよ。
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